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[コメント] カミュなんて知らない(2005/日)

君ら知ってんじゃん、カミュ。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 三流ホストよろしく女たちにせびった金でつくる彼らの映画はメッセージもなければ訴求すべき観客も設定していない。ただ「撮ること」だけが目的で、メンバーたちが「映画が終わったら就活だ」とか「映画が終わったら海外旅行だ」とか言うその「映画の終わり」は撮影の終わりであって、彼らが日々勤しんでるのはクランクアップとともに完結する作業なのだ。命のやり取りをモチーフにした映画を作っているのに、彼らにはそれに向き合う覚悟がない。そんな面倒で実体のないものに向き合うくらいなら、「悩み多き私」ってなポーズを互いに決め込んで、「大学生」という絶対的な担保の上にあぐらをかいて、いろんな相手とキスしてたほうが楽しいのだ。そんな映画、私は観たいと思わない。創作ってのは登場人物を分析する作業じゃない。登場人物の人生を、作家が背負って、受け手に向けて表現してやる作業だろう。ラストで冷や水を浴びせかけたつもりかもしれないけど、雑巾で拭き取れる程度のリアルなら要らないよ。

 かつての名監督らしき先生が「映画が衰退してる」みたいなこと言うけど、こんな風に「映画」っていうメディア自体に価値を求めるような作品をつくるから、映画ファン以外から「映画つまんねえ」って言われるんじゃないのかしらと思う。なんと言うか、若い奴らでも頑張ってる奴はいると思うんだ。必死で物語を伝えようとして映画を作ってる奴らがいるんだと思うんだ。奴ら、金が足りなきゃバイトするよ。そうやって、この時代に、ネットやらアニメやらテレビバラエティに、自分らが大好きな映画が負けないようにって、観客やモチーフと真正面から向き合って、必死に戦ってる奴らがいるんだ。それなのに、ベテランと呼ばれる立場の映画監督がこういう「映画の殻」ってな安全地帯の中でチマチマと愚痴り合うような、閉じた作品を発表することが、私にはとても受け入れ難いものとして映りました。

(評価:★2)

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