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[コメント] レミーのおいしいレストラン(2007/米)

「ドブネズミみたいに美しくなりたい、写真には映らない美しさがあるから」──むかしの人はそう言った。だが、この映画に出てくるドブネズミには、写真に映る美しさしかなかった。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 なんだろう。つい今しがた観終わった映画なのにほとんど印象が無いというのが正直なところ。レミーというキャラクターに、まるで魅力が感じられなかった。

 レミーは確かに料理の天才なのだが、彼(?)がなぜ料理を作りたがっているのかという理由がよく解らないのだ。「できるから、やりたい」というのは解るけれど、「レミーにとって料理って何ですか?」というのが解らない。この映画の設定だと「優れたシェフ」の定義は「味の正解を知っているシェフ=レミー」というだけで、いわゆる「料理は愛情!」みたいな哲学というか美学というか、要するに「料理人かくあるべし」というモチーフの本質的な部分には踏み込んでいないような気がするのだ。料理映画なのに料理人の姿勢に踏み込まないから、キャラクターに深みが出ない。

 特に気になったのが、拗ねたレミーが薄汚い仲間たちを材料庫に導き入れて散々食い散らかしたシーン。彼は自分が料理をしたいという欲求が満たされなくなれば平気で食材を荒らすという、それこそ料理人にあるまじき行為に出るわけで、しかもその後、その雑菌だらけの食材を客に振舞っている。こんなことをされてしまうと、レミーの行動原理はもう全部が全部、自己満足に見えてくる。

 料理モノのドラマに決着をつけるのは、やっぱり「食材や技術を超えた何か」であってほしいし、その「何か」が料理人ではない私たちの生活や人生にシンクロしてくるような普遍性を持っていてこそ、ガツンと面白いドラマが生まれるのだと思うのだ。だって映画の客はその料理食えないわけだから、単に「ラタトゥーユうめー!」って言われても共感できないもん。

 それと、女がリングイニに惚れた理由もまったく解らない。今どきエロゲでもこんなに理由もなく主人公に恋したりしないですよ。

 ピクサーアニメは相変わらずスクリーンから「すごい映像」を送ってきたけど、今回はあまり心に響かなかったです。

(評価:★3)

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