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[コメント] クローズ ZERO(2007/日)

君たちはスポーツをやりなさい、スポーツを。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 最近の不良少年というのはずいぶんと目的意識がしっかりしているのだなぁ。「鈴蘭の頂点」とやらに行き着くまでのプロセスもやけに段取り染みているし、結局のところ頂点を決めるのは多数決みたいなもんだし、これじゃ企業や国会の派閥争いと変わらんじゃないか。

 かつて、不良少年というのはあくまで社会のルールから外れた「はみ出し者」であったはずで、不良のケンカは単純にその鬱屈した若い精神の発露であったはず。そのケンカが目的を達成するための手段に成り下がったとき、乱闘は単なるコスプレ格闘競技会に堕するのだよ。勝つことが目的ならスポーツをやりなさい、スポーツを。

 例えばむかし「城東のボンタン狩り」という慣習があって、不良少年は町をゆく見知らぬ高校生のズボンを脱がして回っていたのだけれど、ああいった暴力行為における目的の無さとか理不尽さこそが不良少年を不良少年たらしめた「鬱屈の発露」であると思うし、人を傷つけることによって得る物が何も無いからこそ、不良少年にだって「今このときだけ」の時間が現出するのだと思うんです。その「今このときだけ」が爆発的な輝きを放った瞬間を指して、私たちはそれを「青春」と呼ぶんです。

 別にビーバップ・ハイスクールや不良行為を殊更肯定するわけじゃないけど、ビーバップの彼らが行っていた「やり場のない暴力」というのは、この映画の小栗くんみたいな「目的ありきの暴力」よりよっぽど健全だったと思うよ。

 *

 私は三池監督がけっこう好きで、今作も乱闘シーンとかカーチェイス中にくるくる回るパトランプを引きずりながら爆走するスカイラインとか、楽しめるシーンはたくさんありました。だから★3なのですけど、あのエンケンがやべきょうすけを撃った後の「さぶっ」っていうセリフが、三池の今作に対するスタンスだったような気がしてならないのです。だったら撮らなきゃいいのに、っていうのは言わぬが何とやらでしょうけど。

(評価:★3)

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