[コメント] ブラインドネス(2008/カナダ=ブラジル=日)
すべてはその一瞬のために。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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実話ベースの一作目、アフリカの現状を容易に想像させる二作目とはうって変わってファンタジーを描いたメイレレス監督の新作は、驚くほどシンプルな物語だった。
この映画には役名が存在しない。個人が描かれていないと言ってもいい。登場人物たちは類型的に配置され、類型的に動く。誰ひとり想像を裏切らないし、誰の行動も感動的でない。そうした物語の中からいわゆる“人間の存在”みたいなものを抽出しようとする試みは決して目新しいものではないし、ドラマとして面白いわけでもない。
ただ、私はその一瞬、つまりは「見えた!」という、あの数秒間にひどく感動してしまった。それまで私の目はスクリーンを見続けていたにも関わらず「見えた!」と小さく叫ぶことになってしまった。
つまり私は、それまでの2時間「見えない」を見ていたわけだ。この物語の主題は「見えない」とはどういうことかというそのただ一点に絞られており、ラストでそれを「見えた!」とする瞬間に価値を見出せるかどうかが勝負の分かれ目(?)だろうと思う。私は「見えた!」と思った。そして「見えた!」ことに感動した。
その意味で、この映画は異世界のリアルを存分に感じさせてくれたのだと思う。その異世界はまがまがしく、実に息苦しく、苦痛だったが、これもまた映画でしか味わえない特異な体験だったと思う。その体験は、楽しかった、と言っていい類の。
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