何食ってるとこんな体力を得られるのかなと、じつに素直に感心してしまったんです。ハッキリ言って、1度見ただけでは何がなんだかよくわからなかった。正直な話、マン博士が吹き飛ばされたあとにクーパーさんが「回転を合わせろ」みたいなことを言い出した時に、ああダメだ、と思ったんです。

　ああ、ダメだ、この映画はおもしろすぎる、と。

　だから1回目の鑑賞時には、そのあとに「ガルガンチュアに向かっている」って機械にいわれて、「ガルガンチュアって、なんだっけ？」と思う程度には意識を飛ばされていたんですね。その後の展開には「ああー5次元だー5次元の映像化だー」「ああー会えてよかったー、必ず戻ると言っていた人が本当に戻れてよかったー」と、いわゆるひとつの、感動の渦というやつに飲み込まれて涙するしかなかったんですね。

　ついさっき2回目を見てきて、なるほどおもしろい話なんじゃないですか、と、数年ぶりにシネスケにコメントを書きこむ気分になっているんです。最近すっかりどんな映画を見ても、『フューリー』や『寄生獣』や『福福荘の福ちゃん』を見ても、ここに書きこまなくてもいいやと思っていたし、別にがんばって映画見なくてもいいやと思っていたんですが、その感じを覆らせるだけのパワーを感じたので、やっぱり『インターステラー』には★5を捧げるしかないんです。

　相対性理論と重力と時間の関係について、1回目の鑑賞でノーランが言おうとしていることがしっくりはまってこなかったのは私自身の圧倒的な無学無教養を差し引いたとしても、そのロジックの多大さによるものなんだと思うんですね。2回目で理解したかといえばたぶん理解はしてないんですが、少なくとも私が“ご都合主義だな”という印象を抱かないくらいの作り込みをされているように感じました。映画なんて、普通の客にとっては印象がすべてですからね。そういう印象を抱いただけで、また、そういう印象を求めて私が2回も鑑賞してしまっただけで、この作品は成功しているといわざるをえないわけです。

　重要なのは、何か巨大なロジック、つまりは巨大な理論、というかストーリーというものが、この作品に含まれているということかビシビシ伝わってくるということなんです。シナリオというか脚本作業というのは、体力勝負だと思うんですね。もう疲れちゃったからどうでもいいや、という部分をいかにギアを上げて潰していくかという。ここはどうせわかんないから適当に流してもいいや、という、たとえば15秒とか30秒のシーンで「ここは、もうこういうことにしといて！」と鑑賞者に強いる部分というのが、出てくるんじゃないかと思うんです。そういうののもっと面倒なやつを、もっと面倒な形で鑑賞者に提示してしまった上に、サラリと回収してしまってる感じ、匂いだけが、画面から漂ってくるんです。

　こんな脚本ね、これは『インセプション』のときにも感じたことだけど、ノーラン以外には書けないんじゃないかな、と思うんですよ。広げた風呂敷がでかすぎる。あえてメンドクサイことを提示して、それを回収していくことに、ノーランは偏執ともいえる情熱で挑んでいるように見える。それは、別にたいして望まれていることじゃないかもしれないけど、ノーランはそれをやろうとしている。それがノーランの作家性というものだと思うんです。

　そういう作家性を、私は次作も見たいと思う。『インターステラー』でここまでのことをやって、まだたぶんどうせ、次の作品を作るんでしょ？　だったらそれを見たいと思うんです。

　マン博士とクーパーさんが殺し合いをするシーンで、遠距離でも通じる無線機は取り外し可能なことになってますよね。だからあのバトルが成り立つんですよね。アン・ハサウェイが中盤で「愛は観測可能でしょ」みたいな話をするからこそ、本棚のくだりのクーパー発言が突飛な感じがしないんですよね。このシナリオって、めっちゃ大風呂敷なのに細部もしっかり刺繍が入ってるんです。そういう細部のシナリオの刺繍を追うだけで、もう1回味わえるなぁと思ってます。3回IMAXで見たら6,000円ですよ。まったく、たいした商業作品と思います。