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[コメント] ロボコン(2003/日)

いかにも貧弱なドラマを『ロボコン』というイベントそのものの魅力が大いに救っている。特にあのシーンの力強さといったら、もう。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 ドラマそのものはヒロインに存在感がなく感情移入しづらい展開が続いたが、過分にロマンスに流れなかったためにモチーフの魅力に食い込めていて、結果的には良かったのかもしれない。「全国優勝」というストレートな結末も、それぞれのロボットの個性と戦略がしっかり打ち出されていたおかげで素人目には説得力があった。

 クライマックスの大会の中で、塚本タケウチが自分の携帯電話にドリルで穴を開けて蝶番に利用する場面がすごくよかった。このシーンは単に、携帯に依存していた少年が今を生きることに目覚めて脱皮しましたという伏線回収の役割だけでなく、「ロボコン」というイベントと世界とのつながりを明示するシーンなのだ。ここで語られたのは、彼らが必死になっている「ロボコン」は決してそれ自体で完結するイベントではなく、世に溢れる工業製品のすべてに応用されるのだという本質的な事実関係である。既成の工業製品をロボコンに応用することで、つまりこのイベントが若者たちにとって、広い世界の中で自分の居場所だとか存在価値だとかを見出すキッカケになり得るのだということを逆説的に表現しているのだ。この点において『ロボコン』という映画は、理系ならではの独創的なロマンを獲得していたと思う。物語作品としての評価は★3としますが、アリナシで言えば断然アリです。

(評価:★3)

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