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[コメント] この自由な世界で(2007/英=独=伊=スペイン=ポーランド)

ケン・ローチ節、健在。政治による規制が一律悪ではないことを理解する意味で重要な事例を提示した映画である。
Master

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バトル・ロワイヤル』の登場人物、相馬光子ではないが、「奪う側に回ってやろうと思っただけよ」というような話。日雇い労働や時間労働という話は別にロンドンに限った話ではなく、現在の日本でも普通に起こっている。プレスリー好きの元総理大臣がやった「構造改革」とやらに沿って出てきた問題を想起すればよいのである。

劇中、アンジー(キルストン・ウェアリング)の父親ジェフ(コリン・コフリン)は「お前とジェイミーさえ良ければ他人はどうなっても良いのか?」という至上命題を突きつける。自由競争に任せれば持つ者は持たざる者を必ず搾取するのである。それを規制するのは国であるはず。枠組みのない自由は単なるわがままであり、暴挙でしかない事を アンジーを通してケン・ローチは提示する。だが、アンジーの「子供と一緒に安定した生活を送りたい」という考えを否定することはしない。それは、日雇い労働者の考えと根本的にはなんら違いがないからである。

今の世界に、この提示は重い。とてつもなく重い。選挙が近いとされる今、政治に向き合う意味でも必見の映画であると言えよう。

(2008.09.14 シネアミューズWEST)

(評価:★4)

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