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[コメント] 告白(2010/日)

巧妙な作品である。観た人と描かれた表現の解釈について話す余地がかなりある。その意味でも面白い作品である。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作未読なので、それを前提にお読みください。

ラストシーン、森口(松たか子)が渡辺(西井幸人)に「ここからあなたの更正の第一歩が始まるのです」と言った後、ブラックアウトして「なんてね。」という言葉で終わる。これはかなりいやらしい終わり方である。この「なんてね」というのはどこまでにかかるのか。つまりは「更正の第一歩が始まる」というところまでなのか、それともそれまで渡辺に告げてきた内容全てにかかるのか、相当全体を曖昧にしてしまう台詞なのである。

そもそも森口の告白の内容は他者によって補完されないものも多く、信憑性にはいくらでも疑問をつけられる。牛乳パックへの血液の注入にしても、ウェルテル(岡田将生)への指示の内容にしても、最後に告げられる渡辺の母親との話の内容、そして母親の部屋に爆弾を持っていった事にしても、森口が言っているだけであり真実かどうかは一切提示されない。(爆弾については最初に「単純な知能が作り出した単純な仕掛けで解除するのは簡単だった」と後の内容と矛盾しているとも取れる発言もしている)

だから巧妙なのである。個人的には鑑賞中は全て真実と受け取って、ラストの森口が淡々と爆弾の顛末を渡辺に告げていくシーンでは言葉は悪いが爽快な印象をも抱いた。だが、冒頭に述べた「なんてね」への疑問が浮かぶと途端に渡辺や下村(藤原薫)への「呪い」の話とも解釈できるのである。鑑賞後それに気づき、色々な人の解釈を知りたくなった。

この映画に「爽快さ」を感じるのは子供嫌いかつ、自分は特別他人は愚かという様な思考回路の人間が潰されるのが大好物である自分の嗜好によるものであり、通常はそういった感触を持つ作品ではないことはくれぐれも言及しておくが、一見の価値ありである。

(2010.06.06 TOHOシネマズ上大岡)

(評価:★5)

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