[コメント] トイ・ストーリー3(2010/米)
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この着地は満点である。アンディが一旦ボニーからウッディを「取り上げ」て、自分自身が彼につけていた設定を思い起こし、彼女にバズ達と共にウッディも託すことを決意するこの一連の流れは、素晴らしい以外表現する言葉はない。「子離れ・親離れ」の暗喩とも取れるこの表現には恐れ入りましたと言うほかないだろう。
しかしながら、全体を通して「敵役」の描写は相当甘い。ロッツォが受けた「仕打ち」は描かれているが、そのことがなぜサニーサイド保育園を「牛耳る」事に繋がるのか、つまりは「飼い主」への憎しみの感情はやはり「飼い主」たる人間(子供)に向くべきではないのかという疑問への回答は示されていないように思える。また、ケンがウッディ側に寝返る動機はどこにあるのか。おそらくジェニーなのだろうが、「説明書」の存在を吐かされる際にほぼ拷問を受けているにもかかわらず、ロッツォに代わりはいくらでもいると言われた時に、彼女は違うと明言するだけの論拠はないのではないか。
こういったところが「ファミリームービー」としての問題点ではないかと思う。ここら辺にちゃんと片をつけようとするとおそらく子供は置いてきぼりにせざるを得ない。しかし、それは本シリーズ全体の精神に反する。そのため、あくまでも敵役は「悪そうな奴」という表現にして詳細な背景はお茶を濁す事になる。シリーズとしてはその選択は正しいが、物足りないのも事実である。このテーマは全く子供をぶった切って大人向けのストーリーを構築することも可能だったはずであり、その可能性を考慮すると本作の評価はやはり5ではない。
正しい選択の基に構築された素晴らしいストーリーであるにもかかわらず、5を躊躇するという稀有な現象の理由は以上の通り。ただし、「シリーズ最高傑作」というのは決して宣伝のための誇張表現ではないとも思う。観ておくべき作品であることは間違いない。日本からゲストも参加しているので、そういった観点からも楽しめるのではないか。
結論としては、やはりピクサー恐るべしといったところである。
(2010.07.10 109シネマズ川崎シアター7)
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