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[コメント] 海炭市叙景(2010/日)

ウェルメイドな作品であることは首肯するが、全てのエピソードが地方都市の場末感と閉塞状況の描写に終始しているのには辟易する。これが現実と言われてしまえばしょうがないのだが、もう少し何かあるだろうという気持ちは抑えられなかった。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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作品内のエピソードを単純に列挙したら、相当陰鬱な作品である。造船所の事業縮小を悲観して妹ひとり残して「自殺」する若者、行政の都市計画に乗らずにひとり生活を続ける老女、あからさまに家庭崩壊しているプラネタリウム技師、東京で働いているものの実家の父親との関係は上手く行っていない男性、自分が進めようとしている事業は先代から否定されまた後妻が自分の子どもを虐待している経営者。先行き「暴風雪」状態の人々のフルコース。誰が好き好んで観るのよと思わざるを得ない話である。せめて老女の話ぐらい明るく出来なかったものか。このエピソードは老女と役所の担当者の会話部分を脚色する事でそれなりに明るい話には出来たと思う。原作がある話では難しいとも思うのだが、観れば観るほど陰にこもる作品の中で「一服の清涼剤」となりえただけに、チャレンジはしてみて欲しかった。

といったようにストーリー部分には一切光明を見出せないのだが、その分、驚嘆するほど丁寧に作られている。カットあたりの時間は相当長い。普通であれば単に冗長なだけで製作者側の自意識過剰ぶりを示すいわゆる「痛い」演出になってしまう事が往々にしてあるのだが、本作では作品全体の雰囲気の醸成にとても寄与をしている。この事が本作を鑑賞に堪える作品にしている。鑑賞する場合は、そういう事を念頭に置いて鑑賞することをおすすめする。

(2011.1.16 シネマ ジャックアンドベティ)

(評価:★4)

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