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[コメント] アナザー Another(2011/日)

何を評価したものか、なかなか難しい。ミステリーとしては情報の提示が上手くないし、死に様を見せるショックものとしてはこれ見よがしの演出が非常に興を殺ぐ。アニメは面白いそうなので、そうなると脚本・演出の問題か。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







コメントの補足をすると、「情報の提示が上手くない」というのは、「クラスの中に死者が混ざっている」という情報と「その死者を殺せば死の連鎖が止まる」という情報と「見崎(橋本愛)は死者を判別できる」という情報の出しどころがあまり良くなく、観客に「死者を判別できるんならさっさとやらんかい」という印象を抱かせてしまっている事を指す。見崎が眼帯を外すのはいわば水戸黄門で格さんが印籠を出すのに相当する「最後の切り札」なのだが、そこへの導き方が雑に過ぎる。

例えばだが、カセットテープは榊原(山崎賢人)が合宿所で初めて聞く形にして、その内容を見崎に伝えに行ったらほかの生徒がカセットを聞いてしまい、『バトルロワイヤル』ばりの殺し合いスタート、もしくは見崎と榊原が全クラスメイトを敵に回すという展開にすれば、見崎の能力を「後出し」にすることに一応の合理性をみる事が出来る。

「これ見よがしの演出が興を殺ぐ」というのは、ワイヤーにしろ電線にしろ不自然な形で画面に登場させすぎであることを指す。「使いますよ〜。」という形で提示するのは伏線とは言わない。非常に無粋である。また、その「殺害トリック」にしても古澤監督自身「死のピタゴラスイッチ(*1)」などとコメントしているようだが、そんなことを言って悦に入れるレベルにはない。もはや観客の中には『ファイナルデスティネーション』シリーズでもっとこだわって、もっと金をかけて、もっとショッキングなシーンを観てしまっている人が少なくないのだが、そのことに思いが至っているか。B級とはいえハリウッドの作品と同じ土俵で勝負をしてしまえば、その劣化版に成り下がってしまうのは自明なのだが、そのことに思いが至っているか。

という事で、評価ポイントが見つけづらい作品である。『making of Love』でストーカーばりの「演技」を見せた古澤監督がその意味での執着心を橋本愛に見せたらもう少し見どころのある作品になったのかもしれないが、残念な結果になった。

*1 http://www2.toho-movie.jp/movie-topic/1208/03another_sb.html

(2012.8.20 シネプラザサントムーン)

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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