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[コメント] グランド・イリュージョン(2013/米=仏)

プロジェクションマッピングに代表される目先の豪華さと勢いだけで突っ走った。悪くはないが、必要な爽快感に欠けるのはマイナス。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







劇中のイリュージョン、特にスタンドアップ系のマジック(カードや手錠抜け)の切れ味はさすがデヴィッド・カッパーフィールドの協力を得ているだけのことはある。特殊効果を使うことで基本的には何でも出来てしまう映画と、錯覚などは使うが実際にそういった現象を起こさなければならないマジックはあまり親和性が良いものではないのだが、その限界を十分検討していると思う。

しかしながら、本作、ストーリーの部分に疑問があり、それがためにケイパーものに必須な爽快感が少なくなってしまっていると思う。

具体的に列挙すると、まずフォーホースメンのうち自分の得意分野を用いて活躍をするのが2人しかいないこと。脱出マジックが得意な女性とスリはその特性を終始生かすことはない。また、このスリはマジシャンと言う意味ではいかがなものかというのもある。

次、フォーホースメンのメンバーに渡されるカードがストリートマジシャンの中でどれほどの意味があるものなのか結局観客側には提示されない状態で終わってしまう。つまりは、秘密結社たる「アイ」と言う組織がどれほどストリートマジシャンにとって羨望の的なのか全く観客に落とし込まない。これは彼らの動機付けを明確にしないことにつながり、没入感が殺がれる。

全体的に判断すると復讐譚と秘密結社への入会テストと恋愛要素をあまり整理せずに放り込んでとりあえずまとめたという印象である。フォーホースメンという集団の存在がもともとあって彼らが復讐劇に手を貸すか、秘密結社のボスに別のキャラクタを据えて入会テストに焦点を絞るかどちらかにした方が作劇と言う観点では面白くなったと思う。

以上を差し置いても、冒頭のカードマジックは見事だった。確認時に全てのカードを提示しなかったことから判断して、おそらくコマ送りすればわかる手合いのタネであろうとは思うが、掴みとして完璧だったと思う。それは改めて特筆しておきたい。

(2013.10.27 シネプラザサントムーン)

(評価:★3)

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