「古い日記」を歌いだしたらその場の全員が聞きほれてしまう公園、歌を聞いているうちにメンバーの創作意欲が湧いてくるカラオケボックス、歌の楽しさを前面に出してくるユニバース、それぞれのライブシーンがそれぞれ説得力のある出来となっていて、この分で観る価値あり！と断言できる。

これはもちろん渋谷すばるの歌唱力、赤犬の皆さんのスキルや雰囲気によってなせる業である。これを的確に映像に落とし込んだ山下監督の手腕、さすがと思う。

そしてところどころギュッと芝居を締める二階堂ふみの存在感。光る部分が非常に多い作品である事をしっかりと強調したい。

という前提で、脚本には数か所「ひどい」箇所がある。最たるものは終盤、記憶を取り戻した茂雄がビルの屋上で武装したチンピラに囲まれているところにカスミが助けに入るところ。あのシチュエーションでなぜカスミは無傷で戻ってこれているのか。

他にも序盤、金属バットで頭殴られて記憶喪失で済むわけがないとか、血まみれの人間を路上に普通に放置していて通報されないなどあり得ないなど、邦画がやりがちな事をやらかしていてそれが玉に瑕ではある。

それもこれもすべてひっくるめて、面白かったので基本的には良し！という結論である。

（2015.2.21 tohoシネマズ川崎）