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[コメント] 焼肉ドラゴン(2018/日)

在日朝鮮人の世界を描いてきた鄭義信が描く70年代の大阪描写は素晴らしいものであった。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作最大のポイントは龍吉(キム・サンホ)の独白だろう。右も左もわからない街に来て、熱心に働いて自分の居場所を作ったその過程を訥々と語るその姿は心を打つものがある。

当時の在日朝鮮人の方の苦悩を丹念に描いた良作であるが、気になる部分もある。

最たるものは、他の方々も指摘されているが、静花(真木よう子)と梨花(井上真央)と哲男(大泉洋)の三角関係である。梨花との背景をもう少し描かないと、哲男が静花に思いを寄せていることを知りながら、なぜそれでも梨花は哲男と結婚するのかがいまいち伝わってこず、展開理解のノイズになっているように思う。井上が熱演なのは間違いないのだが、幾分かそれが浮いているように見えるのは気になった。

あと、背景を知っておかないとわかりにくい部分がある。北朝鮮帰国事業で先に北朝鮮に渡った人から来た手紙に書かれている「釜ヶ崎」はいわゆるあいりん地区だが、それがわかっていないとこの手紙の意味がピンとこない。この指摘が酷なのは重々承知だが、多少事前知識がある方がより理解が深まることは指摘しておきたい。

離散する家族がそれぞれに希望を持ってそれぞれが決めた場所に向かうラストはある意味希望があるとも言えるが、北朝鮮帰国事業の顛末を認識している状況では更なる悲劇の幕開けとしか思えず、それがまたもの悲しさを増すラストシーンであった。

(2018.6.30 tohoシネマズ川崎)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 水那岐[*]

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