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[コメント] 記者たち 衝撃と畏怖の真実(2017/米)

あくまでドキュメント向きの素材。幹がなく枝をまとめたドラマは単に散漫な印象しか残さない。
Master

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ナイト・リッダーの仕事に敬意を表すところに全く疑問をさしはさむ余地はないのだが、この映画はいったいどこに向かおうとしていたのか。

ドラマ(エンタメ)として構築するのにはこの題材は相当難易度が高い。ナイト・リッダーは孤立無援の中で真実を報道し続けたにもかかわらず、9・11への恐怖に駆られた大衆には彼らの冷静な声は一切響かず、結局イラクへの武力侵攻を止めることは出来なかったし、侵攻を主導したブッシュ、チェイニー、ラムズフェルドらは特段ペナルティを課されることもなく逃げおおせた。

きつい言い方になるが、彼らの行動は期待した成果を何一つとして挙げられていなかったことになる。ウォーターゲートは「ニクソンの辞任」という「成果」を得た。そこへの収束が可能である。このような明確な終着点を見いだせない状況をドラマというエンタメの領域でどう「料理」するつもりでいたのか。それに向き合わずに「事実なんだからしょうがない」という姿勢で時系列のみを推進力にした構成にしているように見えるのが非常に残念である。

ナイト・リッダーははガリレオだったわけだ。「それでも地球は回っている」と叫び続けたのが彼らだ。なぜその覚悟や悲壮感が本作から伝わってこないのか。

ヒントはある。記者二人がリサ(ジェシカ・ピール)の父親と外で食事をするシーンと、ナイト・リッダーの配下にある新聞社がナイト・リッダーが配信する記事を掲載していない事に絡む一連のシーンだ。つまりは、「一定の情報を欲しがる大衆(ヒステリックな反応による退化した大衆のメディアリテラシー)」と「大衆の要望に応えようとするメディア(メディアの商業主義)」という視点を提示する姿勢が弱いのである。

ウォルコット(ロブ・ライナー)がブッシュのテレビ演説を受けて記者たちに話をするシーンなど、この視点が皆無とは言わないが、関係者への取材シーンなどを厚く入れる構成は視点をぼやけさせていると思う。

もう少しやりようはなかったかなというのが全体を通した感想である。

(2019.04.20 静岡東宝会館)

(評価:★3)

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