映画としては、かなり抽象化されていて史実ベースの「戦争映画」ではなく「サスペンス映画」をはっきり指向した組み立て。なにしろ「ドイツ」とか「ナチ」という単語が劇中数回しか出てこなくて基本「敵」と言う。人間としての「敵」の姿も直接的には描かれない（最後にトム・ハーディーを捕らえにくる兵士たちのカットも被写界深度浅く、あくまで後景のボケた人影として描かれる）。そこは徹底されていて、純粋にサスペンスフルな群像劇エンターテインメントとして楽しめた。

ただ、アクション演出、特に位置関係の説明は相変わらず良くない。また例によってカットバック使いまくるんで、何がどうなってるのかわからない瞬間は時々ある。ショットごとの絵作りと編集のテンポで「何かが起こる直前」のサスペンスを盛り上げるのはうまいと思うんだが、いざアクションに移行するとモンタージュの構築力が目に見えて弱くなってなんか微妙という……まあなんていうかいろんな意味で『インセプション』クライマックスのシークェンスを110分に伸長した映画だった（複数の時間軸/時間の流れが並列して描かれるという意味で）。

（2017/10/18　劇場にて鑑賞）