[コメント] アメリカン・ビューティー(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
チアリーダー、ビッチな金髪美少女(赤い薔薇を添えるのが、なおさらステレオタイプ)、バーガーショップ(しかも店名がスマイリー)、ドラッグ、プールつきの住宅、銃による衝動的な殺人、その他もろもろ。誰もがアメリカに抱く、ステレオタイプなイメージがところどころに配置されています。
登場人物の悩みは「一束いくら?」と返したくなるような、現実でもフィクションの中でも、大量生産され大量消費されてきたようなものばかりです。
作中で美の象徴として使われるのは、赤い薔薇という擦り切れるほど使い古されたものだったり(ついでに血飛沫を赤い薔薇と対応させるのも使い古されてる) 道端に捨てられた薄っぺらいビニール袋という大量生産大量消費の象徴みたいなものだったり。 街角のゴミという何気ないものに、スピリチュアルな美を見出しちゃうんだぜ! というのもダサいっちゃダサい。(これも狙ってやってる気がする)
最後にはビッチな金髪美少女の安っぽい美談がきて、それに主人公は至上の美を見出します。
残念なことですが、私たちが現実に生きているのはそういう世界だと思います。
こんなものをエンタメとして最後まで見られるように作るっていうのもすごいし、こんな映画を作ろうと思っただけでもすごすぎます。それが大成功している時点で、最高。
何よりもすごいのは、こんな物語やイメージを観客に美しいと思わせるところです。 脚本もすごいけど、何より映像の力を見せ付けられました。「誰もが抱く、陳腐な美のイメージも、陳腐な物語も、陳腐な青春も、陳腐な人生も、全て間違いなく美しいのだ」ということを、映像の力で感じさせてくれるなんて、映画の鑑だと思います。傑作。
映画の題材がネタ切れ、と騒ぐ中、こんなすごい映画が生まれるとは……。アメリカを舐めちゃいかんな、と思いましたぞ。
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