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[コメント] ミルク(2008/米)

不屈の信念を持った男の生き様も素晴らしいし、その男を演じるショーン・ペン も製作陣も素晴らしい。完成された作品でした。
パグのしっぽ

しかし単純に感動出来ないのは何故かというと、性的嗜好ってそれこそ千差万別あって、単に「マイノリティの意見が認められたよ、ヨカッタヨカッタ」で済む話では絶対にないと思うからです。では例えば、これが小児性愛だったら?死体愛好だったら?電車での痴漢行為でしか満足できない男の物語だったなら?これらの性的嗜好もやはり尊重されるべきなのか?例に挙げたものは犯罪行為だからダメ?でも、50年前のサンフランシスコでは同性愛は認められず、また国によっては今でも犯罪として扱われるのでしょう。人に迷惑かけるからダメ?でも、同性愛で生殖を望めないのは現在のところ事実であって、人類の頭数を維持してきた家族制度にそぐいにくいのもまた事実だ。

結局何を言いたいかというと、多種多様なジャンルに分類される性的嗜好を参加人数の多い順にテーブルの左から並べてみた時、本作で描かれた出来事は、社会的承認という線引きが、最大多数である異性愛の横からその次に多数派である右隣の同性愛の横に移動したということであって、それではその線引きは今後さらに右へと進んでいくべきなのかどうかということです。際限なく線引きの移動を認めた場合、社会の秩序は崩れます。では、何を基準に線引きの位置を固定するかとなると、これが極めて難しい問題になります。しかし、私たちはこの問題と対峙することを避けてはいけない。「同性愛は結構人数多いし歴史も長いし文化的にも成熟してるからオーケー、もっとマニアックな性的嗜好は人数少ないし迷惑だからアウト」だと、結局マジョリティがマイノリティを無視する構図に逆戻りしてしまうのです。何も考えず本作に感動することは、無自覚のうちにこの構図を認めることになるのではないかと危惧しています。

この感想、書くべきか書かざるべきか非常に迷いました。なんせ、差別というデリケートな問題に素人の私がアレコレ口を出す自信が無かったからです。しかし、本作を観終わってからずっと気になっていたことなので書きました。ここに書いた内容に間違った認識や無意識の偏見があったとしたらごめんなさい。また機会を見つけて勉強してみます。

(評価:★4)

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