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[コメント] インビクタス 負けざる者たち(2009/米)

道徳の教科書に載るような「良い話」。ただし、映画のスペシャリスト達が持てる力を結集し、莫大なお金と労力をかけて語られた「良い話」。小難しい作品も良いけれど、衒いなく夢を語るのも映画の在り方なのだ。「大作映画なんて」とか言ってしまう映画通のあなたに、ぜひ。
パグのしっぽ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スプリングボクスの試合観戦のため人種を越えて人々がテレビの前に集まり、早朝ランニングでは黒人の子供たちが選手にエールを送るシーンで、この映画が語るべきことは全て終わっていたのだと思う。劇的な決勝戦、試合後の歓喜のシーンは、この壮大な人類の試みを彩るエンディングでしかない。たとえ決勝戦でオールブラックスにボコボコにされていたとしても、ネルソン・マンデラの試みは成功していたし、この作品もクリント・イーストウッドによって撮られていただろう。マンデラの思想の揺るぎなさ、そしてあくまでその思想を追うことに主軸を置く物語構成の揺るぎなさが、もはや神がかり的な説得力をもたらしている。フィクション・ノンフィクションに関わらず、偉大な物語を記録することも映画の一つの役目なのだと感じさせられた。

中学生の頃、授業の臨時休講か何かの機会に『クール・ランニング』を観賞させられたことがある。バカなコメディながらも観る者に勇気を与える超感動物語で、観賞後、教室の中が妙に高尚な感慨に包まれていたことを覚えている。未だに朝の通勤途中や飲んだ後の帰り道など、ふとあのジャマイカ物語を思い出して涙ぐむことがあって恥ずかしい(実は今もコメントを書きながら涙ぐんでいる)。自身のそんな体験があるので、今の中学・高校生にも『クール・ランニング』の観賞を義務付けることは日本の未来にとって有意義なことだと本気で考えていた。しかし本作を観た今、私の中で『クール・ランニング』に強力な対抗馬が登場してしまった。『クール・ランニング』の方が笑いがあって学生向きだけど、『インビクタス』の方が話のスケールは大きいしなぁ…と勝手に楽しく悩んでいる。

(評価:★5)

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