[コメント] ダイ・ハード4.0(2007/米)
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序盤で宣戦布告のコラージュ映像が出てくるが、本編もまた比較的最近のアクション映画から多くを取り入れている。しかもその見せ方がうまい。大技小技の組合せが絶妙で、どこかで見たことのあるシーンだと思いつつも新鮮で活力に溢れている。
撮影もいい。クレーンカメラで災害規模を俯瞰し、肉弾戦をステディカムでリアリスティックに切り取る。切り返しの短いカットで刻んだかと思うと、すばやいパンで繋いだりもする。モーションコントロールも最低限で、絵づくり優先のMTV監督とは一線を画する味わいがある。
世代の離れたバディストーリーとしては、相棒のジャスティン・ロングの造形がすこぶるよい。最初はヘタレたキアヌ・リーブスに見えたが、ブルース・ウィリスとのつかず離れずに違和感がない。肉体派と頭脳派の役割分担はそのまま感情面でもシェアされ、巻き込まれ型キャラクターの愛嬌もあって、ついつい味方したくなってしまう。
終盤のトレーラーと戦闘機のバトルは異次元の様相を呈している。機銃の破壊力は『ターミネーター』のガトリングガンを凌駕する強烈なアウトプットだし、天を向いたままスタックしたトレーラーは近未来の終末戦争を総括するイメージすらある。炎を背負ったヒーローからエンディングに至る演出もよかった。
おまけ:マクレーンがぼやかなくなった理由
一作目と三作目の監督ジョン・マクティアナンは、それ以前にSFジャングル戦映画『プレデター』を撮っている。これと同様、『ダイ・ハード』もベトナム戦争から着想したアイディアが盛り込まれている(休息中の部隊がいつの間にかベトコンに囲まれるという導入部から、見えない敵、本隊との隔絶、物資の欠乏)。「なんでオレが」というジョン・マクレーンのぼやきは、「何のための戦いなのか」というベトナム戦争への批判に繋がるものだ。
これが『4.0』になると、前述の大統領コラ映像にリンドン・ジョンソンが現れない、つまりマクティアナン版のジョン・マクレーンじゃないよということが宣言される。1973年生まれのレン・ワイズマンの世代がパラダイムとするのは911なのだ。『インディペンデンス・デイ』の美術スタッフとしてホワイトハウスを破壊した実績を持つ彼だからこそ、この映画に賭ける意気込みは並々ならぬものがあっただろう。
監督にも俳優同様、世代交代の流れは確実に訪れているはずだ。ハリウッドの旧世代にとっては、911に立ち向かうことができるかどうかが、現役か引退かの分かれ目になるような気がする。
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