[コメント] あなたは私の婿になる(2009/米)
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序盤のオフィスコメディは手際よく、タイトな語り口で笑える。ドジとキレ者の振り幅を、会話とアホ面で演じ分けるライアン・レイノルズに好印象。パソコンのバルーンメッセージも愉快だ。
舞台がアラスカに移ってからの演出のポイントは二つ。ブロックと田舎漁村とのギャップ、およびレイノルズの家族関係の描写である。そしてやがて両者の相互理解へと展開していく…というのが私の予想であり、またそこをどう料理してくれるのかというのが期待であった。
だが、レイノルズと父親の不協和音が、事態を意外な方向へと導いていく。居心地がいいはずの郷里が牢獄に思えてくるのだ。ダメ押しでローカルスターの男性ストリッパーのうんざり感がある。彼が結婚式の牧師役で登場した段階で結末は決まった。この漁村は、精力旺盛で自立心に富むレイノルズが骨を埋める場所ではない。
彼が選んだ道の先にはニューヨークがあり、そこにはブロックがいる。ここで両者はイコールで結ばれる。つまりこの物語は、レイノルズが上京するに至るまでの過程を、時間を巻き戻して検証しているのであり、その決断が間違っていないことを確信するために、彼は再び自発的に(ブロックを追って)ニューヨークに行かなければならないのである。
ブロックが、ワーキングエクゼクティブとしてではなく、大都会の象徴としての役柄を付与されているのがユニークだ。その表情の多彩なこと、絶えず独り言を言い散らす騒々しさはビッグ・アップルの喧騒と結びつく。青年は都会を目指すのだ。レイノルズを主役として見ると、これは形を変えた青春映画であり、クライマックスの弾け方はサクセスストーリーとしてのそれに等しい。
演出の見どころである全裸のぶつかり合いにも触れておきたい。展開がわかっているからこその、予想を越える迫力があの画にはある。ブロックの、脱いだら重量感のある肉体の躍動には驚かされた。
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