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[コメント] クレールの膝(1970/仏)

劇中描かれる30日間で何事も変化させず、ただ主人公のキャラクターを見せていくためだけのシンプルさは、どう見せるかというロメールの仕掛けを読み解く上でとても興味深い。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







女優をいかに魅力的に撮るかというのは映画における至上命題のようなものだが、ここでのクレールへの演出は、いかに魅力的に見せないかということに尽きている。図らずも登場人物たちの共通理解として存在している「内面の美しさ」の悪しき実例のごとく、クレールのキャラクターは平板で従属的で愚かしい。雨宿りの東屋のシーンなどその典型だ。

ローラとのハイキングシーンの豊かなイメージは、彼女の活気と知性を際立たせているが、それもクレールとの対比によってより明確になる。この二人を同時にではなく順番に登場させる構造がうまい。ローラの魅力は、彼女が退場してから、徐々に呼び覚まされてくることになる。

そうしたロメールの演出の外にブリアリは存在する。彼は、我々が見ているようにはモノを見ていない。道化的だが共感はできる。それはオーロラへの語りかけという形で虚飾なく自分の感情と思考を吐き出しているからだ。私たちは、そこに偏向があるゆえにそれを面白がることができるのである。

(評価:★4)

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