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[コメント] 越前竹人形(1963/日)

題材に入れ込まない簡素な娯楽映画に仕立てたのがよい。終盤のホラー演出も好み。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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若尾の咥え煙草の長回しが粋だ。原作の意図する彼女のキャラクターは聖女なのであろうが、演出は娼婦であることを隠そうともしない。というよりこの場合、自立した女性と言い換えるべきだろうか。

台詞の上では、若尾は徹頭徹尾誠実な妻であろうとして健気なのだが、その演出は、自立した女性の立ち振る舞いとして観客の目に映る余地を残している。若尾のキャラクターは脚本には支配されず、彼女自身の女優としてのリアリティによる人物造形が成されている。

終盤のホラー演出も面白い。流産のシーンは若尾の肉体的な死で、三途の川の番人としての中村鴈治郎は必要十分の台詞を伴って存在感抜群。山下洵一郎の待つ家に帰った雷鳴轟く夜、戸板に張り付いた若尾の姿は四谷怪談かと思ってしまった。

若尾文子に付随する「自立した女性像」というイメージを明確に捉えたという点で、この映画は彼女の他の代表作と同等の格式を備えた秀作と呼んでいいと思う。川島や増村のようなエッジの効いた映画ではない分、吉村公三郎という監督の才能を思い知った一作でした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)irodori けにろん[*] 3819695[*] りかちゅ[*]

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