3819695さんのコメント: 点数順
勝手にしやがれ!!脱出計画(1995/日) | 哀川翔の天才の証明。まったく独創的な台詞回しと身のこなしだ。もう「木村くん」という発声だけで笑える。また、ここでも被写体の配置/移動演出が「映画」を形成している。そして物語は最大級のいいかげんさで展開するが、シーンが「覚悟」にまつわるとき、抜き差しならぬ切迫した感情が顔を覗かせる。 | [投票] | |
メリーに首ったけ(1998/米) | これがある限り、以降ベン・スティラーが何をしでかそうとも彼を憎むことはできないだろうという愛すべき映画。また、ファンの欲目を差し引いてもジョナサン・リッチマンは絶好の起用だ。永遠に一〇代として生き続ける中年歌手の歌声は、一〇代の恋心を引きずり続ける男の物語と可笑しく美しく響き合う。 [review] | [投票] | |
血を吸うカメラ(1960/英) | このカール・ベームには、フリッツ・ラング『M』のピーター・ローレやアルフレッド・ヒッチコック『フレンジー』のバリー・フォスターともどこかしら相通ずる顔相が認められる。これすなわち由緒正しき欧州産変態顔である。そこに憐みを誘う弱々しさが加わることで却って「主人公」の資格が保証される。 [review] | [投票] | |
がんばれ!ベアーズ 特訓中(1977/米) | 正篇『がんばれ!ベアーズ』原理主義者の評判はよろしくないのかもしれぬが、正統の続篇でなく派生作とでも思っておけば腹も立たないだろう。しかし、そもそも、これだけ子供らが好き勝手に躍動した映画が平凡以下の喜劇であるはずがない。前作から引き続いての出演者を筆頭に最高級の子役を揃えている。 [review] | [投票] | |
カンパニー・メン(2011/米) | 今日的な話題を扱った映画で、所謂「会社人間」的な生き方に修正を促した物語、てな云い方もできるかと思うが、しかしやっぱり出世は大事だ。というのは、第一回監督作品にもかかわらずジョン・ウェルズがこれだけの陣容を整えられたのは、まさしく彼が映画製作やテレビ業界で出世してきた人間だからだ。 [review] | [投票] | |
スリーデイズ(2010/米) | 『すべて彼女のために』との比較で云えば、上映時間の拡大に比例したエッジの鈍角化は免れていない。もちろんポール・ハギスの確かな力量を認めるにはじゅうぶんの出来栄えだが、その創造力は果たしてどれほど発揮されているか。ラッセル・クロウ&エリザベス・バンクスでは配役の妙も一段見劣りする。 [review] | [投票] | |
海洋天堂(2010/中国) | むろん観客のハンケチをしとどに濡らすべく構想された物語にすぎないのだけれども、ジェット・リーの発する「魚に生まれていれば幸せだったろうに」やら「父さんは海亀だ。ずっとお前を見守っている」やらの台詞が私には嘘っぱちに聞こえず、大いに感じ入る。手製の亀甲を背負って溺れかけるリーの姿よ! [review] | [投票] | |
孫文の義士団(2010/中国=香港) | 仲間の招集・計画立案・訓練を軸とする「準備」の前半部と「本番」の後半部から成るカタルシス爆発に特化した構造は『ロンゲスト・ヤード』『特攻大作戦』などを頂点としたスポーツ映画や広義の戦争映画にしばしば採用されるものだが、この映画の面白さの瞬間最大値は三池崇史『十三人の刺客』も上回る。 [review] | [投票] | |
ふゆの獣(2010/日) | 退屈なあるある系痴情映画かしら。つって見てたら、これはズルい。こんなん笑うに決まっとる。カサヴェテスとは口が裂けても云いたかないけど、四人が一堂に会する修羅場以降はフィーバー状態、全台詞が爆笑を呼ぶ。わけても佐藤博行がいい。ピアノソナタやスローモーションもいちいちギャグめいている。 | [投票] | |
ステイ・フレンズ(2011/米) | 御伽噺らしい緊密度は『抱きたいカンケイ』に分があるが、こちらには都市論的喜劇の活力、展開の補強材としてのリチャード・ジェンキンスの挿話、そして何より「フラッシュモブ」という必殺演出がある。甥っ子の手品のような可愛らしい細部も美点だ。クレーン/空撮による俯瞰カットの距離感も瞳に快い。 | [投票] | |
ミラル(2010/仏=イスラエル=伊=インド) | このレンズへの光線の取り込みはもちろん美しいと云って差し支えないものだが、ジュリアン・シュナーベル+エリック・ゴーティエのカメラ技巧は浅ましさすれすれで、私の許容範囲を踏み越えかけている。これをミラルの波瀾万丈の個人史として見る限り、決して目新しい物語ではないとも云わざるをえない。 [review] | [投票] | |
アレクセイと泉(2002/日) | こんなに動物がいっぱい登場する映画を今でも撮っているのはクストリッツァくらいかもしれない。ややもするとアレクセイ以上に多くのカットに写っている犬のワルチョクが影の主役だ。ねこがペチカから出てくるのには笑ったなあ。食卓に載ってパーティに参加するというガチョウの「将軍」の顛末も見事だ。 [review] | [投票] | |
君を想って海をゆく(2009/仏) | たとえば『クローバーフィールド HAKAISHA』でもそうであったように、そこにどれほどの危険や困難が待ち構えていようと、またそれゆえにもっともらしさが失われてしまおうと、「あの娘に逢いにゆく」は物語に「移動」を導入することにかけて「家に帰る」と並んで強力な映画的モティヴェイションだ。 [review] | [投票] | |
僕が結婚を決めたワケ(2011/米) | ヴィンス・ヴォーンに愛せるところがただのひとつもないのは非常につらい。こいつはただの馬鹿か、本当に心に病を抱えているんじゃないかとしか思えない。こんな野郎とジェニファー・コネリーが相思相愛だなんて許せない! 憎い! という私情を挟みさえしなければ、しかしこれはやっぱり面白い映画だ。 [review] | [投票] | |
海底王キートン(1924/米) | 後年の『キートンの蒸気船』がむしろ「暴風雨」の映画であることを鑑みれば、バスター・キートンの「船舶」映画決定版はこれだろう。特に前半部は船舶の映画的特性を突き詰めるような作劇だ。すなわち「乗り物」であると同時に「住居」でもある空間が海面という「不安定性」の上に成立しているという点。 [review] | [投票] | |
7級公務員(2009/韓国) | キム・ハヌルもカン・ジファンもべらぼうに達者で、またとても愛嬌があるから、狙いすぎたドジ芝居も笑って許せてしまう。ロマンス・コメディ・アクションの三本柱は立派に並立し、乗り物と武器の豊富なヴァリエーションに演出家の高い志が顕われている。まさか「馬」と「弓矢」まで繰り出してくるとは! | [投票] | |
キートンの恋愛三代記(1923/米) | 原題の意を損ねず、なおかつ内容をより的確に表し、語呂がよく、さらに想像を掻き立てる『キートンの恋愛三代記』とは実に見事な題だなあ。しかし改めて私が名づけるならば、これは『キートン動物記』だ。ゾウ(マンモス?)・馬・犬・ねこ・ライオン(偽物)。いつの時代もキートンは動物とともにある。 [review] | [投票] | |
デブの自動車屋(1919/米) | これなんかはかなりキートンのアイデアが採用されているんでないかな。自動車の回転台に人間が振り回されるなんてメカニカルなギャグはいかにもキートンらしい。バケツなどを投げ合うシーンでの飛来物のアクション繋ぎや、狂犬との追いかけっこに見られる縦の画面など、映画の基礎もしっかり出来ている。 | [投票] | |
トラス・オス・モンテス(1976/ポルトガル) | この果てしなく豊かな時間の層と流れは最良のアンゲロプロスやエリセにも伍するかもしれない。このような時制操作術がいとも平然と行われ、またそれが見事な成功を収めている事態に「映画ってこんなに自由でもいいのか!」と恐ろしくなる。美しき風景=光線とともに「小道具」の在り方にも目を向けたい。 | [投票] | |
春の劇(1963/ポルトガル) | お馴染の受難劇を最も原始的な形式=極めてラディカルな方法論で物語る試み。「板の上」から解き放たれた演劇が自在の編集で再構成されるとき「映画」を脅かすほどの映画的興奮が訪れる。救い主が聖骸布に包まれた後の戦争モンタージュのテンションも比類ない。そして何より、最高のロケーション映画だ。 | [投票] |