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[コメント] コントラクト・キラー(1990/フィンランド=スウェーデン)

この作品に限らず、青を基調としてところどころに赤を配するカウリスマキ(とティモ・サルミネン)の色彩設計は、寒々とした風景と人間の暖かみを両立させるマジカルな力を持っている。マージ・クラークのブロンド・ヘアも眩しい。
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**ネタバレ注意**
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クラークに出逢うまでのジャン=ピエール・レオーが見事なまでに生き生きしていないのだが、その「生き生きしていないこと」がこれほど魅力的な俳優が他にいるだろうか。この稀代の俳優がカウリスマキの色に染められたロンドンを右往左往するのだから、この映画が面白いのは当たり前のことだ。新聞の使用による事態の説明(ガス会社のスト、殺し屋の暗躍、レオーが強盗犯として追われていること、真犯人の逮捕)は、古き良きハリウッドに範を取った経済的な演出であり、カウリスマキの映画的正統性を示している。レオーが酒場に入った途端レコードの音楽まで止まってしまうという演出は、驚愕ものだが実に効果的でもあり、カウリスマキ独特のユーモアの表出だ。

ジョー・ストラマーの出演シーンはオマケ的な細部に過ぎないのだろうが、私がストラマー好きであるということを差し引いても、やはり突出した輝きを放っているように思われる。映画とは即ちいかにして充実した細部を構築するかという問題系なのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] [*]

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