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[コメント] ゾンビ(1978/米=伊)

核となるのはゾンビ×ショッピングセンターというワンアイデアだが、それに肉付けをしていくアイデアの量が半端ではない膨大さで、これにはもうお手上げするしかない。まさかゾンビにパイ投げとは!
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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また、これはロメロが空間設計に優れた演出家であることも改めて示している。そしてそれはバジェットに応じた空間演出を行えるというとても頼もしい才能だ。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』においては、空間はもっぱら閉塞的-開放的という二項対立的な相貌を見せており、その往還によってロウ・バジェット映画としては最大の効果が得られるように演出されている。翻ってこのハイ・バジェットの『ゾンビ』では、ショッピングセンターという閉じられてはいるが非常に巨大な空間を様々に区切り、あるいは時にその区切りを取り払うなどして、空間に多様な相貌が与えられている。とりわけショッピングセンターの階層構造を活かした三次元的な空間演出は見ものだ。

また、そのようなロメロの空間演出は主人公たちがゾンビ/無法者集団と戦う仕方と正確に通じている。扉に鍵を掛けること。トラックでバリケードを築くこと。偽の壁をこしらえること。一方で、天井裏の通路を発見してそれを利用すること。こうした空間に対する主人公たちの働きかけはゾンビたちとの戦いを有利に運ぶための行為である。つまり一体一体は決して脅威とはならないゾンビと如何に戦うかという問いは、如何にして空間を自分たちの目的に適したものに作り変えるかという問いにほかならないのだ。無法者集団との戦いも同様である。主人公たちは地の利を活かしてこの戦いに勝利するわけだが、「地」とはまさしく「空間」のことだ。

このように『ゾンビ』における対ゾンビ/無法者集団戦は非常に空間的なものであるのだが、ここで「空間的」とは「映画的」とほとんど同義であると云っても過言ではあるまい。『ゾンビ』とはきわめて高度な映画的戦いの映画なのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)クワドラAS[*] Sigenoriyuki[*] ExproZombiCreator[*] t3b[*] CRIMSON Myurakz[*]

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