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[コメント] トッポ・ジージョのボタン戦争(1967/日=伊)

何がどうしてこうなったのか。日伊合作市川崑監督パペット・ムーヴィ(しかし人間も出る)『トッポ・ジージョ』しかも『ボタン戦争』(Missile War)とは。映画においては「企画」と呼ばれる段階にこそ最も人智を超えた禍々しいサムシングが潜んでいるのやも知れぬ。
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非常に奇天烈な映画なのだが、その奇天烈の多くが意図的に仕組まれたものであることは疑いない。市川は明らかにこれを「とんがった」映画にしようと意気込んでいる。そのような意気込みは多分に痛々しくもあるとは云え、やはりそれ以上に奇天烈だ。子供向けと思しき映画であるにもかかわらず核を扱った物語であるという点もそうだが、ジージョというかわいくあるべきキャラクタは(まあ実際かわいいのだけれど)孤独感に苛まれておりどこか病的なところを感じさせるし、赤い風船との友情というか恋愛というかも童話的というよりむしろ変態的である。

しかしながら、この映画を「とんがった」とか「奇天烈」といった言葉だけで済ませるわけにはいくまい。画面のスタイリッシュさには特筆すべきものがあるし、十五分あまりも続くアヴァンタイトルからタイトルバックへの移行もやたら格好よい。第一これほど徹底して暗黒の画面だけで一篇の物語を語ってしまった映画というのがそうあるものではない。「かわいらしいお話」から出発して荒唐無稽な活劇を通過し、最終的には切ない現実の不条理性に到達する、という作劇にも唸る。

また、オモシロ発明品が出てくるのも好印象で、特に義足に道具を詰め込むという発想は面白い。音楽の水準も高い。

(評価:★4)

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