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[コメント] 長屋紳士録(1947/日)

飯田蝶子吉川満子に「あんたもう、とうに好きになっちゃってるのよ、あの子」と指摘され、青木放屁坊やに対する愛情を自覚する場面。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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続けて吉川が「親切な人が拾ってくれりゃいいけどねえ」と云うと、飯田は不意に肩をもぞもぞとくねらせる。登場以来青木坊やがしていた動作と同一のものである。これは「坊やからもらっちゃったらしいの」という飯田の台詞から、坊やからノミだかシラミだかをうつされたことによるものだと分かる。数日間一緒に暮らしていたのだからノミをうつされたとしても一向におかしくはないのだが、それにしても飯田が肩をもぞもぞとくねらせる動作を行うのが、なぜ既に坊やがいなくなってしまったこの瞬間でなければいけなかったのか。それは云うまでもなく、坊やに対して愛情を抱いていたことをこの瞬間に飯田が自覚したからである。つまり、ここでも小津は「愛情」及び「愛情で結ばれた関係」という不可視のものを視覚的かつユーモラスに提示しているのだ。

そして、坊やが帰ってきた後にふたりで肩をもぞもぞさせるシーンの幸福感。動物園に連れて行ったり帽子を買ってやったり、急に溺愛しすぎだろと思ってしまうが、仕方ないのだ。ふたりはもう「もぞもぞ」を通じて同一化しているのだから。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] 動物園のクマ[*] ぽんしゅう[*]

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