[コメント] アフリカの女王(1951/英=米)
「蒸気船」もまたまぎれもなく映画的な乗り物だ。しかしここで「アフリカの女王号」が映画的に使いこなされていたかと(たとえば『周遊する蒸気船』と比較して)考えると、いささか物足りなさを覚える。やはりヒューストンはとても才能のあるユニックな作家だが、決して大天才ではないようだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
たいへん面白い活劇でありメロドラマであり、キャサリン・ヘプバーンのキャラクタ造型もハンフリー・ボガートのコミカルな演技も私は好感をもって受け入れることができる。出航するまで(=メイン・ストーリーに入るまで)の演出テンションだって相当なものだ。だが、果たしてこの程度でよいのだろうかとも思う。中盤のドイツ兵狙撃や激流下り、終盤の難破はもっとハラハラドキドキさせなければならないシーンではなかったか。それは撮影テクノロジーではなく、やはり演出の創意の問題だろう。
ちょっと意地の悪い見方だが、ジャック・カーディフによるカラー撮影の美しさもここでは映画を「中途半端に」嘘臭くしてしまっているように思える。色彩の人工的な(夢のような、魔法のような)美しさがテクニカラーの美点であることは云うまでもないが、それがよい方向に働いていないのではないか。というのは、(とりわけ出航してからは)ほとんどのショットが植物の緑、水のややくすんだ青、服の汚れた白、船の褐色を中心とした画面であり、画面上の色の配置という点から云えば、これはどこまでも「現実的な」ものだからだ。炎の赤や絞首シーンの空の青の「嘘のような」鮮明さに感動を覚えるにつけ、いっそのこともっと赤や黄などの原色を採り入れて、それこそまったく「夢のような」画面にするのも一策だったのではと愚考せずにいられない。なにせこれは夢のように非現実的で、馬鹿馬鹿しく、美しい物語なのだから。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。