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[コメント] スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(2007/米)

さすがの造形美。「黒」と「赤」というお定まりの対比的な色使いを、バートンは独特の質感で見せる。原作自体がミュージカルなのだから仕方ないけれども、ダニー・エルフマンの音楽で見たかったとも思う。
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**ネタバレ注意**
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この映画のいちばんの問題は、やはり「エモーションの(表現)不足」ということになるだろう。このミュージカルにおける歌はほとんどの場合ダイアローグ的コミュニケーションとして働いており、モノローグ的感情表出ではない(恋する若者ジェイミー・キャンベル・バウアーだけは例外か)。しかも歌の掛け合いはエモーションを増幅するような構造をとっていないし、そもそもジョニー・デップ自体が時折強烈な負の感情をのぞかせはするものの基本的には感情の起伏に乏しいキャラクタだ。徹底して感情表出を排したミュージカルを志向するというのならそれはそれで面白いかもしれないが、ここではそれが目指されているわけでもないだろう。

また、以上のことは「演出のメリハリが弱い」という云い方もできる。たとえば髭剃り対決などの淡白さは意図されたものなのかもしれないが、デップの殺人の描写が単調な反復になっているというのはいただけない。「喉を剃刀で掻っ切る」という理髪師的な殺害の手口は貫かなければならなかったにしても、(「床下落下」も含めて)その見せ方までもが単調に堕してしまっている(別に「単調な反復」自体は構わないのだが、ここではそれが面白さを生み出すには至っていない。あるいはまったく同じ構図とショット構成という「完全な反復」による滑稽さを狙ってもよかったと思う)。だから殺人シーンの中では最初の殺人、すなわち偽イタリア人理髪師サシャ・バロン・コーエンを「撲殺」するという理髪師らしからぬ殺害方法のシーンが意外性があって最も面白い。

ところで、冒頭で「さすがの造形美」と云ったけれども、個人的にはこのようなポスト・プロダクション作業の占める割合の大きい画面作りはあまり好みではない。もともとバートンはポスト・プロダクションに力を入れる作家ではあったけれども、それにしても以前のバートン作品と比べるとこの映画は撮影段階での作り込みが甘い。

(評価:★3)

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