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[コメント] ジェシー・ジェームズの暗殺(2007/米)

西部劇の空はもっと美しくあってほしいと思う。しかし光源としての窓の使い方、絵画的な光の操作はすばらしい。そして、これは何よりもまず「麦畑」と「雪」に彩られた西部劇だ。画面いっぱいに広がる黄金色の麦、白の雪。その画面の切なさ。「麦畑」こそがこの映画のユニックさであり、野心だ。
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嫌悪感までは抱かないが、アンドリュー・ドミニクの演出は私にはあまり訴求しない。冷めた叙情性とでも呼ぶべきものの醸成があざとく、またそのあざとさの在り方が未熟だ。こんなところでヴァン・サントエレファント』な雲を見せられたところで感心はできない。

だから私にとってこれはロジャー・ディーキンスの映画だ。もちろんその撮影にしても全肯定できるわけではない。この画面は「美しい」というより「綺麗」だ。ジェシー・ジェームズとロバート・フォードの物語を綺麗な画面で非活劇的に語るというそれなりに興味深い試みはとりあえず成功を収めているが、その「綺麗であること」に一抹の違和感が残る。「美しいこと」は映画にとっていついかなるときでも絶対的な価値を持つが、「綺麗であること」はそうとは限らないのだ。だが、この映画に関してはそんなことは些細なことだと云ってみたい。列車強盗シーンにおいての、暗闇を切り裂いて迫り来る列車、その光に照らされて浮かび上がるジェームズ・ギャングたち、蒸気、ブラッド・ピットのシルエット、という一連のショットの格好よさに私は震えた。これとて「あざとい」の一語で斬り捨てられかねないものかもしれないが、一瞬でもそのような震えを体験させてくれた映画を否定してしまうことは難しい。

 備忘:食事シーンおよび「食事の支度が調った」という呼びかけが多く出てくる。その各々の描かれ方・機能にはどのような違いがあるか(あるいは、ないか)。

(評価:★4)

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