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[コメント] 庭から昇ったロケット雲(2007/米)

すばらしい。『ツイン・フォールズ・アイダホ』以来日本での公開作がなかったポーリッシュ兄弟が立派な「アメリカ映画」の作家になっていたことに嬉しい驚きを覚えた。展開がいいかげんであろうと演出が多少厳格さを欠いていようと、こういう幸せな映画は大好きだ。愛すべき現代のドン・キホーテの物語。
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ビリー・ボブ・ソーントンのふたりの娘ジャスパー・ポーリッシュローガン・ポーリッシュがほとんどのシーンでにこにこと笑っていて、こっちまでつられてにこにこ、現場のリラックスしたよいムードが伝わってくる(などと思っていたら、ふたりはポーリッシュ兄弟の実の娘だそうです。道理で)。食卓・遊園地・ロケット命名会議……やはり娘たちがにこにこしているこれらのシーンの幸福感には涙を抑えられない(とりわけ遊園地シーンは最高です。幸福な「回転運動」の乱れ打ち!)。ロケット発射成功時に立ち上る雲を見て、街の人々が喝采を送る、思わずFBI連中も喜んでしまう、ブルース・ウィリスもニヤッとする、なんていうのはお約束の演出ではあるけれども是非ともなくてはならないものでもあって、また涙がこぼれる。「夢を諦めない」とか「家族の絆」といったテーマ以上にこうしたひとつびとつの幸せな演出に「アメリカ映画」が宿っている。

CGのスペクタクルという点では一回目のロケット発射シーンが特によい。地面すれすれを水平に飛ぶロケットの画なんて私は見たことがなかったし、遊園地から買い取った遊具をぐるぐる高速回転させるなどロケットの速度・威力の見せ方も適切、またコックピットであるカプセルの着地の仕方も実に面白い。

ほかにも、ソーントンが投げたレンガが銀行の窓ガラスを割る序盤のカットには「画面外からの驚き」があるし、スーパーマーケット・シーンの第一カットに当たるスーパーの外観を全景で見せるカットはなぜか人っ子ひとり写っておらず、赤いカートだけがひとりでに動いている、という無意味にホラー的で魅力的な画面で、こうしたすばらしい細部が全篇を通じて随所にある。ブルース・ダーンティム・ブレイク・ネルソンもよかったなあ。

(評価:★4)

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