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[コメント] ヘルライド(2008/米)

荒野ロケーションは最高だし、スコープ画面がバッチリ決まったカットもある。よくも悪くも思ったよりしっかりした作りだ。エロス&バイオレンスの程度もそれを期待して見た観客を裏切るほど温くはなく、著しく良識を逸脱するほどどぎつくもなく。物語には欠落や剰余こそあるものの、目立った破綻はない。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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配役について云えば、ラリー・ビショップマイケル・マドセンは磐石だが、エリック・バルフォーは彼以外には考えられないというほどではない。それは演技というよりも顔面の問題だ。物語の鍵は彼の少年時代にあるのだから、その過去と現在の連続性を意識させるような、もっと少年の面影を残した顔面がほしかったところだ。

シックス・シックス・シックスとの対決にももっと素直な盛り上がりがほしい。頭目デヴィッド・キャラダインをすでにいつのまにか捕まえている、といういささか脱臼的な展開もタランティーノであればもっとうまく処理していただろう。タランティーノであれば、ということでもうひとつ云えば、彼ならば作品をこのように感傷で埋め尽すことはしなかったのではないか。『デス・プルーフ』がまさにそうであったように、自身が偏愛するところの黄昏たジャンルの映画を自ら新たに作ろうとも、タランティーノはそこで決して感傷に溺れることをしない。彼はそれを彼なりの最先端の映画として提示するだろう。この映画を覆うビショップの感傷は、「バイカー映画」に対する思い入れを欠いた私のような観客にも一定の訴求力を持つ一方、居心地の悪い気恥ずかしさも与えてしまう。

(評価:★3)

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