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[コメント] トイ・ストーリー3(2010/米)

映画とキャラクタを真に愛する者たちの手による創造物。本当に、本当に驚異的な活劇だ。脱獄シーン以降はずっと涙が止まらなかった。なんと緻密で美しいチームワークの活劇だろうか。人格を持った「キャラクタ」であると同時に「小道具」であるという玩具的可能性の全てを賭けて、彼らは「家に帰る」。
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**ネタバレ注意**
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どうしてこれほどの活劇が玩具たちを主人公にして撮られねばならないのか。それは、彼らが持つような純粋で健気な感情を、もはや人類には期待できないからではないか。アクションと手を結ぶことで活劇を駆動させる、純粋で健気な感情。つまるところそれは「アンディの元に帰ろう」というだけのものだ。だが前二作とは異なって、ここで「アンディの元に帰る」ことはもう無条件の行為ではない。「アンディの元に帰る」のは「アンディと別れる」ためであることを全員が承知している。『トイ・ストーリー3』はどこまでも引き裂かれた映画だ。

個々の演出のすばらしさやストーリテリングの巧みさについて語り尽くすことは不可能である。ここでは、クライマックスの焼却炉の描写には心の底から恐怖し、絶望し、そして感動した、とだけ述べておきたい。あの炎の赤を私たちは決して忘れることができないだろう。

最後にもうひとつだけ。冒頭の荒野アクション、中盤のビッグ・ベビー、それぞれの演出水準の高さを見れば、向後のピクサーに西部劇やホラー映画の制作を望むのはもう的外れのものではないだろう。さらに、エンドロールとともに描かれるバズとジェシーのダンス。その滑らかなカット繋ぎに接したとき「真のダンスシーンは死滅を免れ、アメリカ映画の内に脈々と受け継がれていたのだ」と心を震わせた観客は私ひとりではないはずだ。今こそピクサーには真っ向からダンス・ミュージカルに挑んでほしい。

(評価:★5)

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