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[コメント] 神曲(1991/ポルトガル=仏=スイス)

何だこれは? 西欧/キリスト教圏における最重要テクスト群が無秩序に交錯する場を形成するにあたってこのぶっ飛んだ設定に一定の合理性があるのは認めるが、それにしても! 頭のおかしい映画作家番付において、マノエル・ド・オリヴェイラは東の横綱である(西の横綱はアレクサンドル・ソクーロフかしら)。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ここで引用・参照されているテクストの出典を元にこの映画を「読み解く」だけのじゅうぶんな知識・教養を私は持ち合わせていない。しかしそれが映画の面白さを感受するにあたっての障害とはならないと信じる。オリヴェイラは映画の「表面」に驚きを張り巡らせているからだ。

まず、この演技空間を満たしている度を超えた白々しさはどうしたことだろうか。取りも直さず、この白々しさが「批評」だ。登場するのはどいつもこいつもふざけた奴らばかりだが、髭眼鏡のアリョーシャとバイクに乗って登場するイワンのカラマーゾフ兄弟には心から驚き呆れる。しかし彼らにしても預言者や哲学者にしても、どこか憎めない、愛すべきチャームを備えている。これも演出のためか、それとも役者の個性か。また、妄想の中でラスコーリニコフが老婆を撲殺するカットであるとか、フィックスの積み重ねのうちに突発的に生じる瞬間的なアクションのキレにも目を見張る。

だが、この映画を真にオリヴェイラ映画たらしめ、また私が最も高い価値を感じるところは、その豊かな色使いだ。そこにはアルモドバルのように瞳を圧する下品さと紙一重のものはない。光の尊重が色彩に上品な深みを与え、オリヴェイラに繊細かつ力強い無二の画面を与えている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)太陽と戦慄

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