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[コメント] ハンナ(2011/米)

物語の種々の要素がとっ散らかしのまま一向に消化されないので珍作感が甚だしい。また、アクションをやりたくて仕方なかったジョー・ライトがこの題材を選択したことに驚きはない。バスターミナルから地下道にかけての長回しをエリック・バナの格闘で締め括る、なんていう頑張り演出は微笑ましい限りだ。
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ただし、ライトにとっての最大の関心は空間の選定と装飾に向けられている。物語がフィンランドの雪山に始まり、モロッコの砂漠からドイツの「グリムの家」への旅程を要請するのは、またわざわざシアーシャ・ローナンとバナを二手に分けてそれを語るのは、多種多様の空間を画面に収めるためにほかならない。

ラスト・シークェンス、グリムの家における古びたメルヒェン・オブジェの数々やスワンボート、滑り台といった装置がひときわ奮っているが、ローナンとオリヴィア・ウィリアムズ一家のあっけない別れが演じられる波止場では幾何学的な迷路空間を形作るべく利用されたコンテナ群が目を引く。さらに遡ってローナンがCIA施設を脱出するシーン内には、SFと表現主義が手を取り合ったようなイメージが紛れ込んでおり、ライトが隠し持っていた意外な抽出が披露されている。またこのシーンに限って云えば、劇伴にハンマー・ビート感が効いたテクノ・ミュージックを採用したことも適切である。

最後に、この映画に最も貢献した人物はローナンではなくケイト・ブランシェットであるという私見も付け加えておきたい。

(評価:★4)

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