[コメント] ヒミズ(2011/日)
この緊張感は芝居のそれであって画面のそれではないというお定まりの批判は残念ながらいまだ有効である。ともあれ園子温はキャラクタをエキセントリックに仕上げながら『ヒミズ』を驚くほど古典的かつ道徳的な物語として語り直す。『罪と罰』の構造を借りつつ主人公のモティヴェイションは反転している。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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貸しボート屋兼住居の前庭にソファを置いた空間がいい。思い切り好意的に見れば、これはアメリカ映画における「ポーチ」の機能の移植と云うこともできるだろう。ここでホームレス連中と過ごされる時間こそが長らく染谷将太を「普通」の側に引き留めておいたのではないか。もちろん、彼が一線を越えてしまってからは二階堂ふみの出番となるに違いない。
後半において、その空間が大胆に(と云うよりも、いかにも園子温らしく)改装される。蝋燭を並べ置いた内装については「またこれか」と失敗の感が強いが、ピンクに塗りたくって豆電球で装飾した下品な外観は不思議と感動を誘う。宴のシーンにはかりそめの侘しい幸福感がよく現れている。ラストシーンが何らかの説得力を持っていたとして、それはちゃんとこの地点から走り出し、距離を置いて見るほど異様なピンクのプレハブ小屋が段々と遠のいてゆくカットに拠るところも大きい。
エンディング・クレジットのビリングで諏訪太朗と川屋せっちんを渡辺哲に次いで(すなわち吹越満や神楽坂恵やでんでんより上位に)記しているあたりも好感が持てるところだ。
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