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[コメント] バトルシップ(2012/米)

ブリトー入手のためコンビニに不法侵入するテイラー・キッチュの手際の悪さを定点監視カメラ映像の鮮やかな繋ぎで見せたプロローグが傑作だ。これは並大抵の馬鹿ではないと笑い慄く。ちゃんと代金を置いていくあたりも百点満点の馬鹿である。以降のシーンでは並の馬鹿に落ちぶれてしまうのが悔やまれる。
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**ネタバレ注意**
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「馬鹿で真面目」というのはキッチュのキャラクタとともに、この映画の演出・脚本そのものにも当てはまるだろう。真面目ゆえに物語の段取りを消化することに追われた中盤の冗長さが適切な上映時間からの超過を許してしまっている。しかし馬鹿で真面目な演出の臆面なさはふたつの瞬間において最良の果実を結んでもいる。

まずキッチュの恋人ブルックリン・デッカーと傷痍軍人グレゴリー・D・ガドソンが異星人に襲われそうになる大ピンチを、袂を分かったはずの科学者ヘイミッシュ・リンクレイターが救いに駆けつける瞬間。そしてミズーリ艦上に老齢の退役軍人たちが集結する瞬間だ。とりわけ後者は即席で『スペース カウボーイ』を完奏してしまったかのような驚きさえ覚えるが、どちらにも共通して云えるのは伏線とその回収が脚本の書き方として優れているという以上に、リンクレイターなり退役軍人なりの(再)登場が「フレームイン」の快感を伴っているということだろう。これは脚本を漫然と画面化しただけの映画には存在しないものだ。

心の底から最高だと思える瞬間がふたつある。「映画」はそれでいい。なおかつ上映時間が一一〇分を下回っていたならばさらにいい。

(評価:★4)

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