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[コメント] 家族の庭(2010/英)

中年残酷物語。根性が性悪のマイク・リーレスリー・マンヴィルを苛め抜いて愉しんでいる。いったいなんてものを撮ってくれるんだ。俳優の演技にしても画面造型のコントロールにしても、演出家の意志が貫徹されて非常に精密に作られた映画であることは(好き嫌いは別にして)やはり認めざるをえないが。
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**ネタバレ注意**
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庶民の日常の悲喜こもごもでも切り取っている風を装いながら、登場する人物が揃いも揃って厭らしい顔つきをしていて、いったいどういう心づもりでこれを見ていればよいのかしらと惑っていると「秋」の章になって映画は本性を現す。マンヴィル苛めの始まりである。いちいち言動が白々しいジム・ブロードベントルース・シーンがまるで理想の夫婦のように描かれているのも嘘臭いが(しかし「嘘臭い」と見えることもリーは織込み済みなのだろう)、この夫妻が率先してマンヴィルを苛めるのだから遣り切れない。マンヴィルの人格まで断罪する権利を誰が持っているというのか。と云っても、もちろん夫妻はあからさまな仕方ではそれをしない。傍目にはマンヴィルが自滅しているだけに見えるように狡猾に外堀を埋めてゆき、彼女を「家族の食卓」に縛りつける。そしてトドメとしてあのあまりにも残酷なラストカットが繰り出され、演出家の狙い通りに私たちは暗澹たる気分を抱えて家路につくことになるだろう。救いがあるとするならば、デヴィッド・ブラッドリーのキャラクタ、その一点のみである。

(評価:★3)

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