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[コメント] エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン(2011/独)

「労働」の映画として見る限り、最も魅力的なキャラクタはオーナーシェフのフェラン・アドリア氏ではなく、マット・デイモンが総合格闘家に転向したような顔面のオリオール・カストロ氏とベビーフェイスのエドゥアルド・チャトルック氏だ。彼らの忙しく立ち働くさまが画面の活力となって映画を推進する。
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ここに描かれた新作料理開発や調理の様子が一般的なレストランのそれとどれほど懸け離れたものなのか、あるいは逆にどの程度共通した部分を持っているのか、それについて云々できるだけの知見を私は持っていないけれど、それでもこれを面白く見ることができるのは先に述べたとおり「労働」の映画として魅力的なキャラクタが生きているからだ。写っているカットの数から云っても主役と呼ぶにふさわしいカストロ氏は強面の持ち主で、特に冗談を云うわけでもないが、その言葉や立ち居振る舞いにはそこはかとなく可笑しみが漂っている。開店初日の夜、彼とチャトルック氏が店外の地べたに膝を抱えて座り「もうクタクタだよ……」とか云い合うシーンなんて可愛すぎる。

この映画を面白いドキュメンタリと評価できたとして、しかしそれは特異なレストランの舞台裏が取材されているためではまったくない。最高司令官のアドリア氏以上に、現場指揮官であるとともに最前線の労働者でもあるカストロ氏やチャトルック氏のような映画的ルックスのキャラクタをフィーチュアして、その言動=表面から人格が浮かび上がってくるまで丹念に彼らをフォローしつづけているからだ。

(評価:★3)

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