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[コメント] キッスで殺せ(1955/米)

ファーストカットから途轍もないテンション。ハハハ、こんなテンションが最後まで続くわけないだろ、などとタカをくくっていると、続いちゃうんですねえ、これが。ラストに至っては完全にテンション振り切れているのだから、もう参りました。
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**ネタバレ注意**
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とは云い条、終始緊張感のある場面ばかりかというとそういうわけでもなく、整備士ニック・デニスのようなコメディ・リリーフが登場して和ませてくれもする。しかし、観客にとってはいちばん死んでほしくないキャラクタとも云える愛すべき彼がいともアッサリ殺されてしまうのだから、本当に非情。

そして、これは「光」と「音」の映画だ。まあ「それは何もこの映画に限ったことではあるまい。優れた映画はすべて光と音の映画と云いうるではないか」と凄まれたら「ハイ、そうです」としか答えられないし、フィルム・ノワールとして光(と闇)にこだわるというのは当たり前と云えば当たり前なのだが、それにしても本作の光と音の演出は凄まじい。

で、具体的にどこが凄まじいかと云うと全篇が凄まじいのだが、最終的にその光と音の演出は物語と同様に「箱の中身」に焦点が合わせられている。私たちがあの「箱の中身」に対して覚える恐怖は、「この箱の中身は放射性物質である」という知識に則った恐怖では断じてない。それは純粋に「箱の中身」が放つ光と音の理不尽なまでの狂暴さに対する恐怖なのだ。その「理不尽なまでの狂暴さ」は、放射性物質うんぬんという知識的な観点とは無縁なところで、ラストカットに「世界の破滅」を見るという解釈をじゅうぶんに正当化している。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ゑぎ[*]

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