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[コメント] アフター・アース(2013/米)

物語の単純は毫も瑕疵ではない。『アフター・アース』の決定的なつまらなさはここに単純な感情しか存在しないことに起因する。肯定・否定・共感・拒絶・称賛・批難、あらゆる反応を同時に観客に惹起する複雑な映画感情を記してきたM・ナイト・シャマランにとっては『エアベンダー』以上に安易な仕事だ。
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第二次性徴期の直中にいるジェイデン・スミスの被写体的魅力は、彼のこれまでの全出演作品と比較して最も劣っている。『アフター・アース』をもっぱらウィル・スミス(以下、大スミス)とジェイデン・スミス(以下、小スミス)の映画として見たとき、確かにこれが世界でも数名の人間にしか実現できないだろう規模と質を備えたプライヴェート・フィルムであることに疑いは挟めない。このような映画の在り方を私は積極的に許容する。しかし、これが仮に大スミスとは無縁に企画された映画であったならば、そしてまともなキャスティング・ディレクターが厳正なオーディションを執り行ったならば、小スミスがキタイ役を務めることは決してなかったと断言できる。むろんこれは彼の俳優としての資質を云々するものではない。むしろ芝居の巧拙に関して云えば、そう遠くない将来に彼は大スミスを超えるだろうとさえ思う。撮影当時の小スミスのルックスがキタイ役に期待されるベストではなかったというに過ぎないが、ともあれ全篇の大部が一人芝居と二人芝居だけで占められる映画を支配できる被写体ではない(まるで面白みのない衣裳の着用を強いられた点では小スミスに同情する)。

かつてのシャマラン作品の生命線だった画面の緊張感も大きく損なわれている。当然それは前作に引き続いての症状なのだろうが、『エアベンダー』が(それと引き換えに?)手に入れた可愛げすらも『アフター・アース』は失ってしまったようだ。加えて、この物語が「一〇〇〇年後の地球」で繰り広げられねばならなかった必然をシャマランは一向に演出しようとしない。これでは架空の惑星が舞台でもまったく同じ物語を再現してしまえるのではないか。確かにこれは「映画」の面白さの本質とは関係が薄い事柄かもしれない。だが一個の集合住宅でもって宇宙を描かずにはいられなかった『レディ・イン・ザ・ウォーター』とは対極に近い態度であり、またシャマランのマネーメイキング・ディレクターとしての勘の鈍化を指摘するにはじゅうぶんの要件だろう。

生体をモティーフにした宇宙船内部のデザインはかろうじて面白い。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)プロキオン14 けにろん[*] MSRkb[*]

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