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[コメント] イコライザー(2014/米)

二〇一三年公開の両ホワイトハウス占拠劇を見較べて自作の不足成分を悟ったに違いないアントワン・フークアは、ここでローランド・エメリッヒのスプリンクラー演出を臆面なく掠め取るなどえげつなめの挙に及ぶことも辞さない態度で、またぞろの一騎当千アクションにおいて活劇性向上に精を尽くしている。
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**ネタバレ注意**
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「昼は善良な市民だが、夜は裏稼業の人」とか「今は市井人だが脛に傷を持ち、抜き差しならぬ理由で過去の自身に復帰する」といった設定・物語類型の噺は世に数多あるようだが、その中にあって『イコライザー』の唯一とは云えないにしてもやや珍かな点は、デンゼル・ワシントンの「表の顔」と「裏の顔」を衣裳=外見的にまるで区分けないところだ。特製コスチュームを身に纏うバットマンや、覚悟新たに断髪までする『アジョシ』のウォンビンを思い返せば、シーンを問わず一貫して簡素なパンツ+シャツのワシントンはヒーローとしてむしろ特異である。それは彼の微妙なるキャラクタリゼーションやイリーガルの気配が立ち込める夜間撮影などと相俟って、この映画に独特の平衡感覚を与えている。

さて、ここでアクション映画としてのコンセプトは「小道具の活用」にあって、ゆえにクライマクスの場は小道具の宝庫であるところの「ホームセンター」に定められ、ワシントンがその従業員であるという職設定も逆算的に編み出されることになる。当然それは面白い。しかし、それにしてはまだ小道具活用の度合いが徹底的でないという憾みもないではない。これはかなり嗜好の問題に立ち入ってしまうけれども、フークアは小道具や舞台を(ひいては世界を)マシニックに捉える視点を意識的には持っていないのだろう。

また、ワシントンが敵の本拠であるロシアに乗り込んでマフィアの頭領を殺害するシーンは(物語的にではなく、映画のシーンとして)不要だったように思う。彼が国士無双の戦闘力を誇ることは地元のごろつきどもを滅ぼす序盤のワンシーンのみで全観客が承知しているのだから、同僚女性の指輪の奪還過程をまったく描かなかったように、全般的に彼の活動シーンはもっと省略して「結果」だけを伝えてもよかったかもしれない。素人考えながら、それによって上映時間の短縮化および戦闘法の着想不足傾向の解消を図ることができただろうと思われる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)jollyjoker[*] IN4MATION[*] ギスジ[*] ドド[*] まー 死ぬまでシネマ[*] プロキオン14[*] Orpheus

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