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[コメント] お嬢さん(2016/韓国)

トビー・フーパー塚本晋也、あるいは楳図かずお先生や伊藤潤二先生の漫画が瞭らかにしているように)原理的にはワンカットに並存できるはずの「恐怖」と「笑い」が、パク・チャヌクにあってはトレードオフにあるようだ。むろんその性分は憎めないが、面白さの最大化にとっては決定的な障碍でもある。
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**ネタバレ注意**
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換言すれば、繰り広げられる出来事がどれほど変態的であっても、映画の造りは善くも悪しくも健やかである。

以上はさらに次のようにも云い換えることもできるだろう。全篇の大部で舞台を務める邸宅は、リュ・ソンヒの面目躍如たる非常に立派な造型で大いに見応えがあるものの、禍々しさの気配は必ずしも特濃ではない。チャヌクの前作が『疑惑の影』であったことに倣ってこの映画を『レベッカ』に見立てることもできようが、『レベッカ』のマンダレイと較べれば『お嬢さん』の邸宅に漂う空気はむしろ朗らかでさえある。これは『レベッカ』のジュディス・アンダーソンであってしかるべき佐々木夫人キム・ヘスクの活躍が存分でないことにも象徴されている。

さて、話頭を転じて物語の水準から眺めれば、これは「装い」の映画である。作中人物たちは「女中」を、「日本人」を、「伯爵」を、さらには「狂人」「男性」を装うだろう。そこにあって何らかの真情が曝け出されるならば、それは畢竟「裸身」が請け合うにちがいない。物語に一貫する女性と男性の非-対称性が、女性キャラクタと男性キャラクタの間に歴然と横たわる肌露出率の差となって顕れる。ポルノグラフィでもあること、またポルノグラフィとしての在り方はまったく作劇の理に適っているが、これも少しく図式的に過ぎるところだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)disjunctive[*] DSCH ゑぎ[*] けにろん[*] 寒山[*]

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