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[コメント] セールスマン(2016/イラン=仏)

冒頭タイトル明けのロングテイク、このアパートメント倒壊騒ぎの問答無用に激烈な昂りはいったいどうしたことかしら。単に作劇上の機能と解するだけでは事足りない過剰ぶりで、以降がいかにもアスガー・ファルハディ的な技巧と企みに満ちたストーリテリングを保つだけに、思い返していっそう異様である。
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全篇を通じては「権利」もしくは「権利行使の(法的+感情的)正当性」をめぐる映画として見ることもできるだろう。たとえば、物語は主人公夫妻が理不尽にも不動産賃借権を喪失することに端を発するが、彼らは転居先で「いかがわしい職の女」であるところの前の入居者が所有する財産を、彼女の要望に逆らって戸外に運び出す。あるいは、教師でもあるシャハブ・ホセイニは授業中、生徒の懇願を無視して彼の携帯電話を取り上げる。そして云うまでもなく最も重大なところとして、ホセイニは妻タラネ・アリドゥスティを襲った犯人に対する復讐に没頭する。果たして彼の諸行動に理と義は認められるのか、微妙なるグラデーションでディスコミュニケーション劇を塗り固めていくあたりはファルハディの真骨頂だ。

さて、「セールスマンの死」においてセールスマンは死を以て債務を弁済したが、『セールスマン』で暴行犯とされた行商人ファリド・サッジャディホセイニの死は、これをしてホセイニの「復讐権」を消滅せしめたのだろうか。それは、云わば過剰弁済ではないのか。しかし、むろん、ここでそもそも問われているのは、「復讐権」なるものの設定それ自体である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 寒山[*]

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