一応主役はオーディ・マーフィということになっているようだが、出番の数はマクナリーのほうが多い。しかしそのマクナリーは女たらしの間抜けに見えかねないちょっと損な役回り。ヒーローとしての無欠性はマーフィのほうに多く備わっている。ジョニー役のユージン・イグレシアスはカーク・ダグラス〜（痩せている頃の）クリス・ペン系の不敵な面構えを持った役者だ。また個人的にはリー・マーヴィンの活躍が嬉しい。活躍と云っても物語上はいなくても支障のない役どころで、マーフィやイグレシアスの引き立て役のような扱いにすぎないのだけれども、結構な数の台詞をもらっている（マーヴィンが出演していることを知らなかった私は、顔よりも先に声で彼だと気づきました）。この頃はまだ映画俳優としてのキャリアをスタートさせたばかりで、こんなに台詞のある役はこれ以前にはほとんどなかったのではないかと思う。『殺人者たち』への出世を思うと感慨深いものがある（まあ『殺人者たち』の場合、事実上の主役はジョン・カサヴェテスだとも云えますが）。また小さな役ながらも役者としてのユーモアの感覚をのぞかせているのも見逃せない。私がマーヴィンやロバート・ミッチャムや笠智衆やクリント・イーストウッドが大好きなのも、彼らが類まれなユーモアの感覚を持っているからだ。