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[コメント] 狂武蔵(2020/日)

疲労表現の迫真性および状況設定にかけて「山の石松一〇〇人斬り!!」の正統リメイクと云える。殺陣が極度にリアルを志向していることは承知するが、とりわけ坂口拓の移動なり剣戟なりを彼の背後から捉えた画面造型はある種のヴィデオゲームに酷似してしまう。給水所や代替刀の点在もその感を助長させる。
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疲労の極まった坂口が、小休止中に台詞ともアド・リブとも譫言ともつかぬ言葉を撒き散らすあたりのニュアンスは新鮮だ。「坂口拓は宮本武蔵になりきっている」「自身と役柄の区別を失っている」などの云いざまも、ここに限ってはそれに納得を促すだけの微笑ましい迫力がある。

ただし先述したように、アクションの画面はどうにもヴィデオゲーム的な感触に覆われている。映画館の座席に身をうずめる私たちが坂口を操作するコントローラを握っていないことが不思議に思えてくる。(いかなる演出意図に基づいているかに左右されるので)それが端的に悪いということは決してないが、リアル感に対する貢献は期待できない。ワンカットのシーンはカットを割って構成されたそれよりも撮影現場における「嘘」の度合いは小さい。それは確かかもしれないが、撮られた画面におけるリアルを保証するものではまったくない。一人称視点映画において観客は自身と視覚の主たる主人公を同一視するとは限らない、古典的に撮られ/割られた映画よりもその効果が小さいことはままある、という事実とも通じるところのある問題だろう。

撮影現場水準のリアルは必ずしも画面のリアルを意味しない。

(評価:★3)

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