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[コメント] アラバマ物語(1962/米)

いい映画だ。それはもちろん、これが「いいお話」であるという意味も含んでいるが、「いい映画」は決して「いいお話」だけでは成り立たない。ラッセル・ハーランの撮影は一、二ヶ所の寄りのカメラワークを除けばどれも非常に立派で、光と被写界深度の適切なコントロールによって美しい画面が生み出されている。
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子供らの(主に縦方向の)疾走、ロッキング・チェアやブランコの揺れ、タイヤの回転といった印象的な「運動」がこの映画のアクセントとなっている。とりわけ回転するタイヤ自体を「乗り物」として使うというのはとても面白い着想で、私は他の映画でタイヤがこのように使われているのを見たことがない(ポーチの階段に激突することや、そのときのお転婆娘メアリー・バダムのリアクション演技がまたいい)。

また、唐突な「エジプト人の真似」やバダムのハムの仮装(!)といった細部も実に面白いし、床に就いたバダムと兄の会話が画面外で流れたまま画面はポーチのグレゴリー・ペックを捉えるというショットや、ラストのバダムとロバート・デュヴァルの切り返しなどには思わず涙ぐまずにいられない。

そして、子供らがかわいいということもやはり無視してはならないだろう。「子供がかわいいか否か」を映画に対する評価の観点として馬鹿にしてはいけない。どのような容貌であるかにかかわらず子供というのはみな本来かわいいもので、つまりある映画作品に登場する子供がかわいかったとすれば、それは演出家が子供本来の生き生きした姿を写し取る能力を持っているということになるからだ。ま、そんな理屈を抜きにしても子供がかわいい映画には心が洗われますよね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] けにろん[*] ヒエロ

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