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[コメント] ディア・ハンター(1978/米)

短い。三時間でさえチミノの演出は息切れを起こしている箇所があるが、それでもこれはもっと長くなければならない映画だ。「友達がボウリングのピンセッターに挟まれる」程度の事件しか起こらない愛すべき日常に帰還したこと、しかしその日常性は決定的に変質してしまったことを描くには、もっともっと時間が必要だ。
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この映画が思想的な面での批判を呼ぶことは理解できるし、「映画」に即しようとするあまり「そんなことはどうでもよい」と嘯いてみせるつもりもないが、その批判者がチミノの態度の真摯ささえも認めないのだとすれば、そちらのほうがよほど独善的ではないだろうかと私は思う。

また、純粋に映画に即した批判がありえることも理解できる。私はその批判を「演出の息切れ」という言葉に込めたつもりだが、それでもやはりこれは私にとっては愛すべき映画だ。素敵なダンスシーンがある、私にはそれだけでいい。

延々と続く結婚パーティ・シーンのダンスに溢れる幸福感は、しかし悲惨な予感と苦さの自覚を糊塗することでかろうじて成り立ったものにすぎない。このような引き裂かれたダンスシーンを持つ映画をどうして愛さないでいられようか。だが、それだけではない。ビリヤードをしながら“Can't Take My Eyes Off You”に合わせて体を揺らすクリストファー・ウォーケンを見ただけで私は涙がこぼれてしまう。マイケル・チミノはまぎれもなくダンスシーンを描くことができる作家だ。私がアメリカ映画を好きなのも、そこに素敵なダンスシーンがあるからだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)緑雨[*] 太陽と戦慄 Lostie みか[*] ジェリー[*] けにろん[*] uyo[*] shiono

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