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[コメント] 侍(1965/日)

雪に始まり雪に終わる映画。のちの『斬る』ほどではないにしても、ここでも和傘の使い方が印象的。三船敏郎の粗野な明朗さは徐々に伊藤雄之助の不気味さに呑み込まれ、映画の不穏な空気は決定的なものとなる。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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三船の出生の秘密が物語の肝であることは云うまでもないし、それがためにラストがいっそう活きるということは理解するけれども、その秘密をめぐる展開は私にはちょっと退屈。それよりも三船と小林桂樹が絡むエピソードをもっと見たかった。などという若干の不満も、あの雪の中の斬り合いを前にしては吹き飛んでしまう。そこでの遠近取り混ぜたショットの鋭いカッティングは確かに私たちを興奮させるかもしれないが、その興奮は限りなく冷たいものだろう。凄惨なテロルとしての桜田門外の変。殺し合いの無情は三船の個人的悲劇として顕現する。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] 赤い戦車[*] けにろん[*]

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